石川との一問一答・メールインタビュー (Pole to Pole 2000出発直後に訊きました)

Interview by Osamu Yamagami

---石川君のところへ最初に「Pole to Pole 2000」に参加しないかと声がかかったのは、いつ頃のこと?そして、その時まず第一番に、どんな気持ちがしましたか?

去年の10月か11月頃だったと思います。奥多摩の山を走る日本山岳耐久レース(長谷川恒男杯)に出たとき、一緒に参加した地平線会議の代表世話人の江本嘉伸さんが、詳しい資料をもってきてくれました。北極から南極へ行くなんて、これはとんでもないプロジェクトだなと思いました。そして、なんと面白い話なんだと。

---計画の話を聞いて、その場ですぐに「行きます」と飛びついたんですか? それとも、しばらく考えてから返事をしたのかな?

その場ではないです。かなり考えました。なぜならそのときすでに、ぼくの頭の中には、2000年はハワイとミクロネシアに行って、航海術の修行をするという計画があったからです。

---「Pole to Pole 2000」に参加することになったと告げたとき、ご両親はどんな反応をしましたか?

2月もだいぶ過ぎて、ぼくが大学の休学届けにサインしてくれと頼んだとき、両親ははじめて知ったようです。「は、何いってるの?」という感じでした。

---「Pole to Pole 2000」というプロジェクトの、どこに魅力を感じていますか?

北極・南極という場所は、自分で計画して行くにはお金などの面で厳しく、そこに行けるという魅力が一つ。まだ行ったことのない、南アメリカや中央アメリカにも行けることが一つ。9ヵ月ものあいだ、色々な国から集まった若者と一緒に行動することで、素晴らしい仲間が得られるのではないか、また英語もうまくなるのではないかという淡い期待。それから、主な移動手段が人力であること。人々への様々な呼びかけ、交流、地域でのアクティビティーなど、単なる移動ではなく、社会的な側面をかなり含んでいること、などでしょうか。

---2月末からのトレーニングを入れると10ヵ月も拘束されちゃうから、石川君がこれまで追いかけてきた南太平洋の伝統航海への参加は、今年は無理だよね。それでも「Pole to Pole 2000」に参加しようと思ったのは、なぜ?

極地を旅することは昔からの夢でした。またとない機会ですし、今回のプロジェクトで得るであろう様々な経験や人とのつながりは、今後のぼくの活動に大きな広がりを与えてくれるでしょう。Q4の質問の答えも、理由になっています。航海術はぼくのライフワークだと思っていますので、ミクロネシアやポリネシアの人たちのように、あせらず時間をかけて修得したいと思います。寄り道するのもいいかなと。

---石川君が今回の旅のなかで追求したいと思っているテーマはなんですか?

異文化交流といったらいいでしょうか。このプロジェクトを通して、世界中の様々な国に仲間ができます。そのネットワークを新しい社会作りに生かしていくことが、ぼくの最大の課題です。プロジェクト中のテーマは、「Pole to Pole 2000」のウェブサイトにもあるように、これに関わる様々な人々をインスパイアして、行動を呼び起こすことです。この場合の行動とは、環境問題や平和について考えたり、多様性の力(人種や性別を越えた)を認識してもらうことです。

---今回、北極点から南極点までいくあいだ各国を通るわけだけど、どこの国や地方に興味がありますか? それは、どんな理由から?

もちろん北極と南極が第一。昔からあこがれていました。中央アメリカの国々にも興味があります。南アメリカのパタゴニア地方も。南アメリカは人類が最後に到達したところで、北米の先住民ともつながりがある。太平洋をカヌーで渡った人々がいた可能性もあるし、航海術ともリンクして、とても興味深いです。

---いまのトレーニング地、デジカメの写真で見るといかにもカナダらしい自然が広がっているけど、どんなところなんですか? スキーコースに隣接しているっていうから、観光地なのかな。

かなり田舎です。ぼくがいるのは100マイルハウスの「TheHills」という施設ですが、108マイルハウス(なんて安直なネーミングなんだ・・・)というところまで、40分くらい歩かないと、店がない。観光地では決してないです。近くの空港はウイリアムスレイク空港。100マイルハウスからは車で2時間くらい。

---今石川君がいるトレーニング地の日中の気温と、明け方の最低気温を教えてください。 2月下旬に到着した頃より、少し春めいてきているんでしょうか?

最高は10度くらいで最低は0度くらいでしょうか。ぼくの感じた数字なのであてになりませんけども。寒さになれてきたのか、他の理由からかわかりませんが、来たときよりは暖かく感じます。

---以前のメールで、なかにはほとんど雪のなかで生活するのが初めてみたいなメンバーもいると書いてあったけど、最初の北極の旅に向けての石川君に対するみんなの評価はどうですか? マッキンリーまで登っているんだから、頼りにされている?

マッキンリー登頂への評価は大きいです。山には強いというイメージをみんなもってくれていて、頼りがいがあるかはわかりませんが、少なくとも頼りなくはないと信じています。英語が得意ではないので、積極的にチームをひっぱったり、議論に参加するところまでいけないのが歯がゆいです。みんな経験は少ないけど、順応性がかなり高く、驚きます。運動能力も素晴らしい。リーダー役はカナダのディランです。2メートル近い巨人で、熊のようなヒゲをたくわえている。とてもいい奴です。

---トレーニング地では、食事はどんなものを食べているんですか? 毎日体力トレーニングがたいへんみたいだから、すごい量食べるんだろうな。日本食は恋しくならない?

キャンプのときはオートミール(ぐちゃぐちゃの甘ったるい麦)やベーグルなど、極めてシンプル。普段は宿のレストランで、朝はシリアルやパン、昼と夜は肉や野菜など普通の物です。ただ、食事量は日本にいるときよりも、圧倒的に増えました。胃拡張なのではないかと思うほど、ばくばく食べてます。1日3回くらいトイレに行きます。食べた物がそのまま出てるんじゃないかと心配しています。今のところ特に日本食は恋しくはないです。

---すらっとした痩せ型で、物腰はおだやか――ってマーティン・ウィリアムズさんについて書いていたけど、トレーニングなどを通して、さすが、極地探検の大ベテランって感じられることはありましたか? どんなところが彼の魅力ですか?

魅力っていうのかな、カメラで写真を撮りまくってもフィルムが入ってなかったり、物事をすぐ忘れてしまったり、そんな天然ボケの可愛らしさみたいなところが、魅力的ですね(笑)。父親のような存在で、優しく、とても謙虚です。極地遠征のベテランとして感心するのは、物事を俯瞰して見る力。常に冷静にチーム全体を見渡しています。一人一人に対する気配りから、大きな優しさを感じます。

---最初の北極がもっとも困難で、危険なども大きいと思いますが、どんなところに期待していますか? なにが楽しみですか?

北極を歩くということ自体が楽しみです。きっとものすごく寒くて、乱氷があちこちにはばかり、命の危険もあって、精神的にも肉体的にもきついのでしょうが、それが楽しみといえば楽しみです。マイナス30度の中、頭を真っ白にして、無心に歩きたい。北極でキャンプ生活することの厳しさを知りたい。

---北極での旅、マーティンさんも若い隊員たちといっしょにそりを引いて行動するんですか? それとも彼はサポート役に徹する? 今回のトレーニング中にいろいろと極地での生活の指導を受けたローリー・デクスターさんも同行するんですか?

北極にはマーティンは同行しません。足を怪我していて右足をひきずっているのも理由ですが、彼はサポートに徹します。ガイドのローリーは一緒に行動します。それに韓国のカメラマン1人を加えて、全員で10人です。

---メールのやりとりができるのだから、持っていったパソコン(リブレット)はちゃんと動いているんだと思いますが、モバイルギアのほうはどうですか? 北極にはもっていくのでしょうか? インマルサットはちゃんと使えましたか?

モバギは一度も使ってません。北極には・・、うーん、多分もっていかないでしょう。デジカメやスチルなど写真を撮ったりするのが精一杯だと思うからです。インマルは108マイルハウスのマーティンのオフィスから一度NHKに向けてテストしましたが、色々障害物があるせいか失敗しました。北極にはもっていきますが、つながるかどうか、かなり心配です。東京でテストしたときはNHKにしても山上さんの家にしても、高くて空が見渡せる場所からのテストでした。インマルでメルマガの編集部にメッセージを送って、それを向こうが打ち込み、メルマガで流すということも考えています。朝から夜の11時までいつぼくから電話があっても対応できるように、編集部の人に伝えておいて、ぼくは時間があるときに電話をするという仕組みです。朝から夜の11時なら、なんとかぼくも時間を作れるでしょう。ちなみにリブレットはかなり快調です。カメラがついていたり、音楽を聴けたり、すごく小さいので、皆からうらやましがられています。

---海外でモバイルするのは初めてだと思いますが、日本からメールを受け取ったりWebの掲示板を見たりすると、どんな気分ですか? 返事を書いたりするのがたいへんじゃありませんか?

単純に嬉しいです。返事は今のところ大変じゃありません。友達からのメールで、サクラが咲いたとか映画の話とかの、何気ないメールが嬉しいですね。気分転換になります。

---北極に出発するのは、いつからですか?

3月31日の朝、エドモントンに向けて車で出発します。そこからレゾリュートに4月1日に飛びます。

---いまわかっている範囲でいいから、今後の予定を教えてください。

まず4月いっぱいは北極に費やし、5月からは自転車で北米を南下します。5月8日に北カナダのイヌビックを発ってユーコン川沿いの町・ドーソンに入る。そこからホワイトホースへ。ぼくが97年にユーコン下りをはじめた町。再びかの地に立てると思うと、気持ちが高ぶります。ホワイトホースではチルクートトレイルで2日間犬ぞりをする予定。さらにワトソンレイク、プリンスジョージを通り、今いるトレーニング地・100マイルハウスに戻ってくる。カムループスを通ってバンクーバーに4〜5日滞在し、カルガリーに着くのが6月1日の予定。ロッキー山脈でトレッキングなどをして、ウィニペグ、ミネアポリスを通り、シカゴへ。デトロイト、トロント、そしてオタワに着くのが7月1日。ボストンを経てニューヨークに5日間滞在し、メディア向けのプレゼンなどをして、ワシントン、デンバーへ。ロスに着くのが8月1日の予定です。メキシコを通って、グアテマラの国境に着くのが8月15日。ここで様々なアクティビティをこなしながら、9月7日まで過ごす。そこから中央アメリカを抜けて、南アメリカに入るのが10月1日。アマゾン川上流で1週間滞在し、ペルーに入る。11月にブラジル、アルゼンチンを通過して、11月22日プンタアレナス着。11月25日に南極に向けて飛び立つ。ざっとこんな感じですね。もちろん、これはあくまでも予定にすぎません。今後、大幅に変更になることもありえます。

---石川君の出発前は、“北極点から南極点まで人力だけで縦断する大冒険”というのが今回の大きな売り物なのかと思っていましたが、ナオキたちのトレーニングぶりや今後のスケジュールなどを知るにつれて、「Pole to Pole 2000」というプロジェクトは、断固として人力による地球縦断をめざすというのではなく、もっと広い視点で、チームのメンバーが各地でさまざまな体験を積み重ねて、それを旅をしながら還元していこうというようなとらえ方をしているみたいに感じられてなりません。どうでしょうか?

その通りなんです。冒険的な視点よりも、社会への呼びかけ、還元を目標にしています。ぼくもこちらに来て皆の視点の相違に驚きつつ、納得し、面白く感じています。

---初めてのパソコン・トラブル(2000/05/18、起動せず)に会った石川君。現在は予備機を使ってアクセスしている状況でしょうが、振り返ってみてリブレットという機種を決定した要因や、実際に使ってみての利点・欠点などを教えてくれませんか?また、予備機を今使っている状況ですが、問題などが発生していますか?機種が変わったことでの感想などもお願いします。(05/18メイン機トラブル発生・予備機準備、05/20予備機発送、05/24予備機到着・メイン機日本発送、05/30故障機日本到着、06/07リカバリ完了後発送、06/10に100MileHouseP2P事務所到着というスピード修復を日本にいるPCサポート担当の山上が行う。トラブルシューティング、ハードディスク換装(サテライト・アップグレード・ステーション殿支援)、OSシステムリカバリ、各種ソフトインストール、ユーザ環境リカバリ(メール資源の移行、接続設定、モデムカードテスト含)を行った。)

決定要因としては、小さい、ほかのパソコンよりバッテリーが長持ちする。ぼくが旅行の最中にすべき、すべてのことができる。(デジカメ映像の取り扱い、インターネット、ウエブサイトの日記更新、メールなどなど)。小さいというのはかなり決定要因の一つです。実際に使ってみて、素晴らしいと感じます。いっぱい機能があって使いこなせない部分があるが。キーボードに不自由は感じないし、カメラがついていたり、音楽が聴けたりして、人に感心されると嬉しい。しかし、車の中でメールを打つときなどはモバギのほうが気楽なので、モバギで打つことも多いです。利点としては、持ち運びに便利で、軽いし小さい。ある程度の時間ならコンセントの電源なしで動く。結構タフ。実際には使わないけど、小さなカメラなんかがついていて、みんなから「ホーッ」と言われます。欠点としては、特になし。これ以上壊れないで欲しい。キーボードの小ささも特に気にならない。強いてあげるなら、北極では使えなかった(使わなかった)のが悲しいです。北極仕様の防水、ソーラーバッテリーのリブがでたらいいなあ、と夢に描いたりしています。また、予備機(Libretto60改)においては何の問題もなく使わせてもらっています。確かに遅いなあと思うときがありますが、たいしたことはないです。リブ1100がスタイリッシュな外見で、このリブはいかにも頑丈そうで、旅向きの面構えをしていますね。